2012年4月27日金曜日

地球温暖化の何が問題なのか


最もよく耳にする環境問題の一つに、温室効果ガスによって惹き起こされる地球温暖化がある。もっとも多くの人は、それが自分たちにどのような悪影響を及ぼすのかわかっていない。

1. 地球温暖化とはどのような問題なのか

温室効果とは、地上に降り注ぐ太陽光の放射エネルギーが地上付近の大気に吸収され、地表の温度を上げる現象のことである。実際の温室(ビニールハウス)は室内の熱を吸収することがないので、比喩としても不適切であるが、一般には既に定着した言葉になっている。

最も影響力のある温室効果ガスは、赤外スペクトルの一部しか吸収しない二酸化炭素ではなくて、赤外スペクトルの大部分を吸収する水蒸気である。温室効果の67%は、水蒸気によってもたらされる。また二酸化炭素ほどではないが、メタンも地球温暖化の原因になっている。「農業は地球温暖化の防止につながる」という常識に反して、日本の水田は、堆肥を嫌気分解して、メタンを発生させている。大気中の二酸化炭素濃度は、19世紀の工業革命当時280ppmであったが、現在では363ppmとなり、地球の平均気温もこの100年ほどの間で0.5℃ほど上昇している。カーネギーメロン大学の調査によれば、21世紀の気温は1-4度高くなると推測されている。ただ4度以上上昇する確率は20%以下とされている。

地球温暖化が危惧されだしたのは比較的最近で、それ以前は、地球の寒冷化が心配されていた。地球史全体を通してみると、二酸化炭素濃度は減少する傾向にあり、また我々が生きている完新世も、約10万年を周期とする急激な温暖化(1万年前に終了)と緩やかな寒冷化のサイクルの中にある間氷期とされることから、地球は今後長期的には氷河期に突入すると予想される。


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2. 地球温暖化脅威説批判

地球の温暖化が人間の経済活動によるものなのか、今後とも温暖化が進むのか、温暖化は人類に悪影響なのかに関して、科学者の間で意見がまとまっていない。地球温暖化脅威説に反対する人たちは、次のような疑問点を挙げている [槌田敦:CO2温暖化脅威説は世紀の暴論] 。

2.1. 地球温暖化は人間が原因ではない

地球の気温の上昇/下降は、二酸化炭素濃度の上昇/下降より先行している。二酸化炭素濃度が上昇するから地球が温暖化するのではなくて、地球が温暖化するから二酸化炭素濃度が上昇する。二酸化炭素濃度は海洋表層水の温度で決定され、表層水の温度は太陽からの受光量で決定され、太陽からの受光量は、長期的には地球軌道の離心率によって、短期的には黒点の数によって決定される。だからこの100年間の平均気温の上昇と二酸化炭素濃度の上昇は、人間が原因ではない。

2.2. 地球温暖化は地球を生命の楽園にする

24500-6500万年前の中生代、恐竜が闊歩していた時代の二酸化炭素濃度は、現代の10倍以上あり、気温も10℃ほど高かったが、当時は生物の楽園であった。比較的最近の人類が生きていた時代の中では、BC6000-3000年頃が現代よりも気温が高かった。しかし農耕文化が普及した当時を、気象学者は、クライマティック・オプティマム(気候最適期)と呼び、暮らし易い時期と判断している。一般に気温が高く二酸化炭素濃度が高いと、植物の光合成が活発になり、人間を含めた動物にとっても増殖しやすい環境となる。


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2.3. 大気汚染は地球温暖化を阻止する

もし人類が石炭や石油を大量に燃焼させているから地球が温暖化しているのなら、なぜ工業化の進んでいる北半球よりもそうでない南半球のほうが、気温が上昇しているのか。実は硫黄分の多い石炭や石油の燃焼によって生じるエアロゾルが、太陽エネルギーの一部を反射して気候を寒冷化させているのである。もし地球温暖化を阻止したければ、石油や石炭をもっと燃焼させたらよいということになる。

3. 温暖化問題の本質はどこにあるのか

以下反論しよう。

3.1. 人間も副次的には責任がある

ミランコビッチ以来、地球の気温の変化は日射量の変化で説明されるようになったが、日射量と気温は必ずしもきっちり対応していない。気温はむしろカオス的な振る舞いを見せる。また一歩譲って、日射量の増加が気温の上昇の原因であるとしても、いったん気温が高くなると水蒸気や二酸化炭素やメタンなど温暖化ガスが、海中や地中から蒸発して、それが二次的に気温を高くすることは事実である。

3.2. 地球温暖化は地球寒冷化を惹き起こす

気温が上昇することや二酸化炭素濃度が上昇すること自体は問題ではない。二酸化炭素濃度が5000ppmを超えたら、人体への直接的な影響が出てくるが、そこまで上昇することは考えられない。問題は、100年で0.5℃というスピードが急すぎるということである。気温が急激に上昇すると、極地方の氷が溶け、塩分が薄くなり、深層海流の沈み込みを弱めてしまう。海水の煙突状の沈み込みはプリュームと呼ばれ、通常4000メートルの深さまでに達している。しかしその沈み込みの深さが90年代の調査では数百メートルまでしかないことがわかった。


南アフリカでの大恐慌の影響

グリーンランド沖で冷やされた塩分濃度の高い海水が深海に入り込み、海底を大西洋から南アフリカを経て、一部はインド洋で、一部は北太平洋で湧昇し、海底に沈んだリン等の栄養分を表層にまで押し上げる働きをするベルトコンベアを深層海流大循環と呼んでいるが、この熱塩循環は、二酸化炭素濃度が増加率2%以上で増加し、750ppmに達すると、完全に停止し、しかも復元しないと言われている。最終氷期が終わった約1万年前から現在に至る「完新世」と呼ばれる時代は、グリーンランド氷床データなどによると、それ以前の変動の激しい氷期と比べて「異常に安定している」とも呼ばれるほど気温の変動が少ない。これは深層海流という海の空調システムがうまく作動していたからとされている。だから深層海流が停止するとい� �ことは、人類にとって大変な脅威なのである。

約1万2千年前、氷期が終わって現在のような温暖な後氷期(完新世)に昇温していく途中に急激に寒冷化するヤンガードライアス事件が起きた。この事件は、北米大陸に発達していたローレンタイド氷床が急激に融解し、セント・ローレンス川から大量の淡水が北部北大西洋に流入したことによって引き起こされたと考えられている。急激な温暖化の後に来るのは急激な寒冷化である。ジェットコースタに乗ったような気候変動である。これは不確実性の増大という意味で、情報エントロピーの増大と表現することができる。


世界に異常気象をもたらすエルニーニョも、地球温暖化と関係があるのではないかと疑われている。エルニーニョ現象とは、東太平洋での深層海流の湧昇が弱まり、その結果の赤道部に水温の高い部分が発生し、それが空気の沈み込みである貿易風を弱めることである。Trenberthは、1882-1995年の海面気圧のデータを統計解析し、1990-1995年の長期のエルニーニョは、自然変動としては通常よりかけ離れていることを指摘した。深層海流大循環とペルー海流の関係ははっきりしないが、はっきりしていることは、水と空気の循環が停滞すると、それは人類を含めた生物にとって生存を脅かす問題になるということである。実際、大気中の風速は、気圧の傾度に比例した強さで吹くが、二酸化炭素濃度が高くなると、気温の傾度は小さくなり、風� ��は弱くなることがわかっている。

3.3. 温室効果はエントロピーを増大させる

人類は、自らの生命と文明を維持するために、環境にエントロピーを捨てなければいけない。そのエントロピーは水と空気の循環によって運ばれ、最終的には廃熱という形で宇宙に捨てられる。地球温暖化問題の本質は、ごみの最終形態である廃熱が、宇宙に捨てられなくなり、地表に溜まって私たちの生存圏を熱的平衡状態に近づけることである。

「地球が温暖化すると海水面が上昇するので大変だ」といった問題意識は的外れであり、そうした的外れな問題意識に基づいているから「石油や石炭を燃やすと、燃焼によって生じるエアロゾルが気候を寒冷化させるから、地球温暖化を防ぐためには化石燃料を燃やすべきだ」といった的外れな解決策が出てくる。大気汚染は大気のエントロピーを増大させるのだから、気温を一時的に下げるからといって、環境にやさしいとはとてもいえないのである。


一般に温度が上昇すると熱エントロピーは増大するが、平均気温の上昇は、必ずしも地球全体のエントロピーの増大を意味しない。10℃の空気1リットルと30℃の空気1リットルは、20℃の空気2リットルと「平均気温」は同じだが、エントロピーは同じではない。だから、「地球温暖化問題」はきわめてミスリーディングな表現であり、むしろ「地球熱死状態化問題」とでも名付けられるべきである。地球の熱死状態化を防ぐには、エネルギー政策をどう転換するべきか、これについては、次回で述べることにする。

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